この記事では、Electron Builder を用いて、Electronアプリをパッケージ化(ビルド)する際の手順について、最小限の構成でまとめています。
- Electronアプリをパッケージ化する方法
- ElectronBuilderの導入方法と、最小限の設定方法
- ビルドされたアプリの構成(展開済みアプリ/ インストーラー形式)と動作確認方法

1. Electron Builder のインストール
まずはビルドツール自体をプロジェクトに追加します。
npm install --save-dev electron-builder
package.json を開くと、以下のようにElectronBuilderが追加されていることが確認できます。

--save-dev
は開発時だけ必要な依存関係として追加するオプションです。
Electron Builderは本番配布用パッケージ生成のためのツールなので、アプリ内には同梱しません。
2. package.json にビルド用スクリプトを追加
package.json
の "scripts"
にビルド用コマンドを追加します。
{
"scripts": {
"start": "electron .",
"dist": "electron-builder"
}
}
npm run dist
でビルドできるようになります。
Electron Builderは dist
というコマンド名が慣例的に使われますが、任意の名前でもOKです。
3. build 設定の追加
Electron Builder は設定を 3種類の場所で受け付けます。
(適用される設定の優先度は、専用ファイル(.json / .yml) > package.json の build セクション)
package.json
の"build"
セクションへの記述- JSON形式のファイル(例:
electron-builder.json
) - YAML形式のファイル(例:
electron-builder.yml
または.yaml
)
今回は、コメント記述への対応や管理面でのメリットから、YAMLファイルによる方法を使います。
ビルド設定ファイルの作成
プロジェクトのルートディレクトリ(package.json
と同じ階層)にelectron-builder.yml
または electron-builder.yaml
を作成します。
ここでの「electron-builder
」という名称はElectronBuilderで定められた使用設定ファイル名のデフォルト値であるため、そのままファイル名で作成してください。(変更する場合は–config オプションを使用します)
※詳細は公式ドキュメント:Common Configurationで確認できます。
最小限のビルド設定例は以下のようになります。
# 表示されるアプリ名
productName: My Electron App
# 出力フォルダ
directories:
output: dist
# 含めるファイル/フォルダ
files:
- index.html
- main.js
- preload.js
- renderer.js
- package.json
productName
はアプリ名やインストーラー表示名に使われますdirectories.output
は生成物の出力先files
にはビルド時の対象として含めるファイル(もしくはそれを含むフォルダ)を指定します。
→node_modules や package-lock.json は不要なため含めていません
【補足】設定ファイル読み込みの仕組みについて
Electron Builderは起動時に、次の順で設定を探します。
- プロジェクトルートの専用ファイル
electron-builder.yml
→electron-builder.yaml
→electron-builder.json
の順でチェック
package.json
の"build"
セクション
専用ファイルが見つかると、その内容を設定として読み込みます。
内部的には以下の流れです。
- electron-builder CLI実行
- 設定ファイルを探索(ルート直下)
- YML/JSONを読み込み → JSオブジェクトに変換
- Electron Builderのビルド処理へ渡す
- 各OS別ターゲットに応じてパッケージ生成
4. ビルドの実行
設定ができたらコマンドを実行します。
npm run dist
実行後、dist/
ディレクトリにOS別のインストーラーや実行ファイルが生成されます
※ Windowsなら .exe
、macOSなら .dmg
、Linuxなら .AppImage
などが出力されます

5. 出力物の確認
生成されたファイルを実際に起動して、想定どおり動作するか確認します。(ここでは、Windows環境を例に解説しています)
生成されるファイルの構成と意味は、それぞれ以下の通りです。
出力物 | 用途・概要 | 配布について |
---|---|---|
win-unpacked/ | ・展開済みアプリ本体 ・インストール不要で動作チェックに便利 | 基本的には開発確認用 (Zipファイル等で配布も可能だが一般的ではない) |
Setup.exe | インストーラー(NSISなど) | ✅ 配布用のメインインストーラー |
.blockmap | ・差分アップデート用ブロックマップファイル ・差分アップデートをしないなら不要 | ✅(自動更新を使う場合) |
builder-debug.yml | ビルド時の内部設定や生成情報が書かれたYAML | ❌ デバッグ目的。通常は配布不要 |
builder-effective-config.yaml | 実際に適用されたビルド設定の最終形 を書き出したファイル | ❌ デバッグ目的。通常は配布不要 |

実運用ではこの後、コード署名(Code Signing) や 自動アップデート設定 を行い、配布物として仕上げていきます。
展開済みアプリの動作チェック
win-unpacked/
に出力されているのは、インストール不要の展開済みアプリケーションです。
主に、開発中の動作チェックやZipファイル等で配布を行いたい場合に使用します。
フォルダの構成は以下の通りで、.exe で出力されているアプリケーションファイルを実行することで、
作成したアプリを起動できます。
dist/
├─ win-unpacked/
│ ├─ My Electron App.exe
│ ├─ resources/
│ │ ├─ app.asar
│ │ └─ ...
│ └─ 依存モジュールやElectronランタイム


- インストーラーを通さない生のアプリ本体
My Electron App.exe
を直接実行するとアプリが起動します- 開発中の動作確認に便利(インストール不要)
resources/app.asar
にアプリのソースコードがパッケージ化されて入っています
インストーラー使用型の動作チェック
dist フォルダ直下に出力される、My Electron App Setup.exe
インストーラーを起動することで、アプリをPCへインストールすることができます。
dist/
├─ My Electron App Setup.exe


コントロールパネル:プログラムのアンインストール画面で、アプリがインストールされていることが確認できます。
(削除する場合もここから実行が可能です)


- Windows用インストーラー(NSIS形式が多い)
- これを実行すると
Program Files
にインストールされ、スタートメニュー登録なども行われます - 配布用のメインファイル